Talib Kweli/Eardrum: 商品的にはコモンの新譜からカニエの新譜のセールス的な間を埋める存在なんでしょう。まあ３年前のアルバムでも（この時は先物買いの意味ですけど）カニエを起用していましたし、流れとしては自然ですかね。それにしても随分偉くなったもんです。今回カニエは１曲のみの関与らしく、その他プロデューサーはマッドリブ、ハイテック、ピート・ロックのような取り合わせが良いタイプが少な目、代わってウィル・アイ・アム（２曲）、ＤＪカリード（これも２曲）、ジャスト・ブレイズ、クワメなどセルアウトじゃん？と判断されても仕方ないような面子が惜しげもなく注入されています。またゲストもＵＧＫとかラヒーム・デヴォーンとかＫＲＳ・ワンとかはまだ自然な方でして、果てはノラ・ジョーンズとかジャスティンとか交流あんの？と思ってしまう人選もされていました。この結果楽曲は前作よりもさらに幅が広がっています。７０年代ソウルを下に敷いた大変聴きやすいナンバー、クワイヤがバックで歌う曲、本人がフックを朗々と歌い上げる曲などなど売れ線でありながらちょっと知的でセンスの良いトラックが多数入っています。ラップもカニエのスタイルにちょっと似て来たように聴こえますね。別にそういう人のアルバムと思って聴けば問題ないでしょう。ただシングル向きな楽曲の合間に所々見られるマッドリブ（とかハイ・テック）仕事は正直埋もれてしまっているような…これは良いのでしょうかね。トラックメイクした側としてはこういった楽曲の中に入れられてしまって複雑なんじゃないでしょうか。ブラック・スター時代の地味さが好きだった人には特にボーカルフィーチュア曲は鬼門かもしれませんので購入前の事前確認が必須でしょう。流行アイテムとしてはこれまでの無名加減が逆にイケそうですのでお勧めです。
Swizz beatz/One man band man: プロデューサーの冠皿に駄作無し…と常々書いて来ました。それは滅多にそういった企画のお皿が出ない証拠でもあります。まあ裏方としてやってる人にスポットライトを当てるのは（特にメジャーでは）それなりにリスクが伴われるでしょう。さて他アーティストへの提供曲も当たり外れの幅が結構大きいこの人、新しいキャリアへの足がかりを発見できるでしょうか。クレジットを見てまずびっくりすることになんとメインプロデュースが本人である曲は３曲しかありません。その他はネオ・ダ・マトリックス、ニードルズ、ノッツ、他新進らしき人がプロデューサーとして数組呼ばれていまして曲によっては主役が介添えする格好となっています。言って見ればこれはラッパーのスゥイズを打ち出すお皿と出来、裏方ではなく正真正銘のアーティストとしてデビューをする目的の１枚であることがわかります。ゲストも（ほぼガヤ要員として）ドラッグ・オンを呼ぶだけで、（モータウンからのリリースであるにも関わらず）まるでマイナー皿のようなトラックリスト表記になっています。ラッパーとしてこれまで彼が仕事を残したか？といえば別にそんなことは無く、実際聴いて見ても有名ＭＣに比べキレが足りないようなムニャムニャとしたライムであったりします。まあ下手では無いですが。さらにはこのラップに与えられるトラックも特に新鮮とはできないばかりか彼特有の”アゲ”パワーが感じられず意外に地味な１枚になってしまっています。こちらも出来が悪いとまでは行かず、ひょっとして他アーティストのボツ曲を使っているのかな…と思ってしまうような微妙さでした。う～んどうなんでしょうね。来月に向けたリリースラッシュにレーベルとして対策をどうしても打ちたかったという事なんでしょうか。プレス数が結構多そうですし早めに安くなりそうですので待てる人は様子見でも良いんじゃないかと思います。
Wc/Guilty by affiliation: キューブ所持の会社でありますレンチ・モブから新作をリリースしています。このレーベルはアートワークは綺麗なんですけど配給はマイナーとしては良い方くらいでこれまでのセールス実績は良くないところでもあります。いわば友情がビジネスを上回った形と言えましょう。クレジットを見てみますとメインプロデュースはどうやらキューブ人脈での起用と思われますチキ・チキ＆ディージョン・アンダーデューでして、半分弱の曲に起用がありました。つまりは昨年出ましたキューブのソロと同じような仕上がりか？と思いましたところスポットで起用されているプロデューサーがレジェンダリー・トラクスター、リック・ロック、ジェリーロール、ミスター・ポーターなどの引きのある面子でして、こちらに主役の意向が反映されている模様です。当然ながらゲストもキューブ、スヌープ、ゲームなどで（弱小レーベルですから）サプライズ的な組み合わせはありません。クレジットが無いゲスト（というか中ジャケにも顔が出ていますので仲間扱い）でクレイジー・チューンズのコスリ参加が数曲にありました。若い頃のような軽さが無くなってキューブのような貫禄がぐいぐいとついていますため、やはりマッド・サークルと組んだ時のようなイメージは望めません。しかし彼なりにドレが切り開いたウェッサイの流れを維持発展させたいと思ってはいるらしく、今や古ささえ感じさせるピーヒャラとしたシンセ音、サイレンのように不安感を煽るリフを全ての曲に採用しています。そして要所に入れる口笛や舌をレロレロとまわすようなフロウはやはり彼ならではのものです。言ってみればゲームの近作に近い真面目な作りが見て取れます。キューブも彼の個性を正しく捉えているのでしょう。売れないかもしれませんけどゲームの皿を買うならこちらも買わないとウソだと思いました。
Kinfolk/Ali & Gipp: 頼っていましたネリーの勢いも（客演仕事の激減により）今ひとつ感じられませんのでここらで自立もしくは主従逆転を狙いたいところであります。そこで個別売りだったところを（こちらもシーローに置いてけぼりを食ってしまっています）ギップとセット販売に変更、商品競争力をつけてあります。プロデューサーはトラック・スターズ、ニッティ、ノー・ＩＤ、（久しぶりですね）ダラス・オースティンのような有名どころが半分以下で、メインを張っていますのはギップ人脈のＤＪスピーディ（６曲）、また（ゲームのお皿で名前がありました）Ｔ・ウェインとスティー、（ネリー関連の仕事がメインです）ジェイソン・エファーソンなどが呼ばれています。ゲストも非常に豪華でして、ネリーはもちろんＴ６Ｍ、ピンプ・Ｃ、ロイド、デヴィッド・バナーやマーフィー・リーのような近況報告的な顔出しまでありました。アルバム序盤はギップ色が強めで、スピーディ仕事によるどろどろとしたスクリュー前提曲が並びます。粘度が高くなかなか良い出来と思っていましたらなんと中盤にかけてハイフィー系の楽曲が登場、そして中盤にはやはりありましたネリー参加による裏声合いの手入りの過去作インスパイアナンバー、終盤にかけてはベース風、ガイの早回しなど予想以上にバラエティに富んだ内容となっていました。こうなるとアルバム前半で感じていましたギップ主導感はかなり後退して聴き終えた後のアーティストイメージはマーブル柄を見ているような混沌とした印象に変わってしまいます。まあこれが最初ですし、ヒットが出たらそこを強化するのも商品設計としてはアリなのかもしれません。どちらかのファンであれば押さえておきましょう。
Plies/The real testament: スリップ・ン・スライドから出ています新人です。レーベルと契約したのは３年前らしく、これまでは客演で実績を積んでいた模様。この度メジャー配給でフルアルバム発表の運びとなりました。ジャケ写からはとてもそうには見えませんけどシンデレラボーイとできるでしょう。実際プロデューサーもお金がかかっています。ジョナサン・ロテムが３曲、ドラマー・ボーイ、エイコンで各１曲ずつ、他（トリック・ダディ人脈で）ゴールドラッシュ、（クランクものに強い）ミッドナイト・ブラック、（結構昔から演ってる人ですけどなぜ今ここに呼ばれたのでしょうか）ＤＶＳ、ヘン＆ローなるチームなどこういったお皿で予想される正体不明のチームによる総抱え状態はありません。またゲストも前述のエイコンのほかＴ・ペイン、タンクと歌もので売れている人があてがわれています。まあアトランティックがセールス対策として予算をかけてくれたんでしょうけど、ひょっとしたら予想外のケミストリーが発生しているかもしれませんので楽しみではあります。実際聴いて見ますとギャオギャオとした荒れた声でありながらバラエティに富むトラックを乗りこなすテクニックを同時に持つテクニシャンであることがわかります。自分の声を多重録音で使うあたりはちょっとだけパック（またはマスター・Ｐ）似です。スロウラップを堂々とライムするあたりは新人とは思えず驚いてしまいました。ただＢＰＭ高めのアゲにはそれ程強くはなさそうで、アルバムにも（スナップス系を除き）掴みのいい音が入った踊り安い曲は見られませんでした。レーベルが歌ゲストを入れたのはそう言った事情からかもしれません。同じようなプッシュを受けていますリッチ・ボーイあたりと比べるとルックスが落ちますがそこがまたツウ受けするかもしれませんので好事家の方は押さえておくと良いでしょう。
Chingo Bling/They can't deport us all: ラテン系コメディアンの出したラップ皿です。マック・ドレーなんかの白人版と考えたらいいでしょう。中ジャケでは（主にシモネタを中心とした）ギャグが満載です。ダウンロードよりもＣＤパッケージで楽しむべき芸風と言えます。そんなお笑いラッパーをバックアップするのはジム・ジョシン、（ポール・ウォールやマイク・ジョーンズの過去作でプロデューサーをしていました）サリー・ウィリアムス、ハッピー・ペレス、（ジェイ・ティーのお皿に名前がありました）ダニエル・カーテル、ミスター・シャドウなどで、ラップ～ロックにまたがってラテン層のプロデューサーを中心に集められています。一方ゲストは流行りものがメインです。ポール・ウォール、ベイビー・バッシュ、Ｄ４Ｌのファボ、フィフス・ワード・ウィービー、ビッグ・ポーキー、ピットブルなど簡単に言いますとキャラが近く有名な人がかなりの曲にフィーチュアされていました。ゲストが多いのには理由がありまして、（もう予想がついた人もいると思いますけど）この人はお笑いだけありましてラッパーとしてのスキルが今ひとつな側面があります。声的にもあまり厚みが感じられない白人声でして、正直即ヒットするのは難しいところです。しかし彼は自分に足りないものを良く分かっているらしく、前述のゲストと流行を積極的に取り入れたトラックメイキングでデビュー作を面白く仕上げています。中盤は（ラテン系男性シンガーらしい）ラッセル・リーという人が歌いまくったりして誰の曲だか分からなかったりするんですがまあこの人なら良いかなとも思ってしまいました。お笑いだけあって別に自分だけ前に出ようとしたりはしていませんし、ライムに含まれるギャグがわかる人にはより面白く聴けるでしょう。今後売れるかどうかは不透明なれど興味のある人は試してみるといいでしょう。
UGK/Underground kingz: ようやくリリースされました。追加録音を含むためか流出が原因で２枚組になったかと思われますが南部ものでは８ボールの３枚組なんてのもありますしこれに比べればまあ予想の範囲内であろうかと思われます。別にデュアル構成になったからといってプロデューサーがぱっくり２種類に分かれているわけではありません。ピンプ・Ｃで７曲、スカーフェイスで３曲、ジャジー・フェイで２曲、（ノーリミ関連皿やリル・ブージーなどの楽曲を手がけていました）スティーブ・ビローらのプロダクションが３曲、そのほかリルジョン、ＤＪポール＆ジューシー・Ｊ、マーリー・マール、またフッド系無名プロデューサーなどがまんべんなく散らばっていました。またゲストもトゥ・ショート、リック・ロス、アウトキャストといった予想ができそうな人選のほかチャーリー・ウィルソン（２曲）、タリブ・クゥエリ、ディジー・ラスカル、ビッグ・ダディ・ケイン、クール・Ｇ・ラップなどのサプライズゲストまでレーベルの気合が見て取れる並びになっています。序盤はこれでもかというくらいソウル臭の強い曲が並んでいます。プロデューサーが違っても傾向に変化がありませんので２人が意識的にセレクトしたのでしょう。ただ古いソウルを単に下に敷いただけ？とも思えるような曲も一部含まれています。中盤はスクリュー栄えがしそうなズンドコとしたビートが多め、ただこの中にもソウルフルなギターが挿入されていたりします。終盤にかけてもやはり哀愁系メロディーラインを従えた曲が中心でして、彼らとレーベルの打ち出す方向が明確であることが感じられました。ただ２枚組みで出さなくても良いかなと思えるのも確かでして、単にセールスを稼ぐなら１５曲くらいに絞っても良かったように思えます。とまれ、今年の最重要作に数えられるのは確かですので彼らのサービス精神に乗っかって２１世紀のソウルを楽しむのが正解なんでしょう。
Khujo Goodie/Mercury: 元仲間が白人と組んで大ヒットしてしまった結果「俺でもソロで演れる」と思ったのでしょうか、グループを放置してこの人も（コッチですけど）２作目をリリースしています。本作では下半身を含む衝撃的なカット（事故以来これまで殆ど見かけませんでした）を中ジャケに入れていますのでその気合の入れ様は本物なんでしょう。そんな彼をバックアップしますのは（デヴィッド・バナーの音職人を務めていました）ゲット・クール（自身もラッパーであります）ドニー・クロス、（トゥリルビルなどの楽曲を手がけたことがあります）ジョー・ビング、ファイブ・スターなる人（？）、トラック・キラーなるチーム（？）など（どうやって集めたんでしょうか、マイスペース？それともメジャー時代にいろいろ持ち込みがあったということなんでしょうか）複数組の詳細不明なプロデュースチームが関与しています。アルバム序盤はこれら（はっきり言って小粒な）制作陣の力量的な問題でしょうか、昨今の南部ラップと殆ど変化が感じられずフック連呼とかのありがちな展開、トレエ、ショーン・ポール、仲間のギップらゲストが追加される中盤からは楽曲にややメリハリが出ていました。終盤にかけては（よくある展開ではあれど）低音の定位がはっきりした曲が多くラップもフックの配置が適性なため聴ける内容になっています。メジャー時代はオーガナイズド・ノイズの作る音とセットで語られていたため典型的な南部もののトラックと組み合わされると妙に違和感が出てしまいます。ここを乗り越えるだけの何かを入れてくれれば一皮剥けると思えただけにこの出来はやや残念です。南部ブームが盛り上がるほどにオリジネイターの彼らに出番が無くなってしまうというのは皮肉な話でもあります。アウトキャストもあんな調子ですからどこかメジャーがＯＮ一派を盛り上げてもらいたいものです。
Public enemy/How you sell soul to a soulless people who sold their soul???: 新作が出ました。ここ数年はグループが部分集合してちょこちょこ（ベストを含む）リリースをしていますし久々感はそんなにありません。ヨーロッパの視聴層はラップにシリアスなメッセージを求める向きがあったりしますので、ＫＲＳ・ワンとかこの人たちは出せば出しただけ海外ではリアクションがあるそうです。そんな同人ラップ化しつつもあります彼らは本作では割と本気らしくチャック・Ｄとフレイバー・フロウ、音職人のＧ・ウィズ、（ツアーメンバーとして）ターミネーター・Ｘやプロフェッサー・グリフなど全盛期（つまり初期作品）のメンバーが集結しています。当然制作は前述のＧ・ウィズが中心でしてこれにゲスト込みでレッドマンと舎弟と思しきプロデューサーが数曲に関与する形になっています。さすがにかつてのように生ドラムをＢＰＭそのままにサンプリングするような楽曲は無く、打ち込みをベースにスクラッチや声、銃声をサンプルした音構成になっています。また流行を意識してか５０などのアルバムにありそうなハードコア路線なども見られました。意外だったのはフレイバーのライムが今聴いてもアクセントとして有効に機能することでして、これなら今流行っているラッパーのお皿にゲストとして呼ばれてもすんなり収まるように思えます。ただ短いサンプルをＪＢのリフのように繰り返す（かつてのＰＥマナーそのままの）楽曲は機材のメモリ性能が格段に向上した今では「なんでこんな窮屈なことをするの？」といった印象が拭えません。またツアーでやっているらしい迷彩服上下の舎弟が書き割りよろしく後ろに立っている様子、また相変わらず説教くさいフロウなども今となっては限定された層にしか受け入れられないであろうと思われます。まあ彼らもツアーでは往年のバンドのような使われ方をしているようですし、こういった楽曲を定期的に出す必要があるのかもしれません。当時を知っている人には一瞬だけ面白い１枚と出来そうです。
Layzie bone/How a thug was born: 本体が売れて今こそソロの勝負時！と思ったかどうか不明ですけど先月マイナー経由でレイジーのシングルが出ています。キャリア的に谷間の時期でもチカーノ系の人と組むなど積極的にリリースがあった人ですしまあ当然でしょうか。ＤＶＤもついています本作ではプロデューサークレジットは無いもののほぼ全曲にゲストを迎えて変化を付けようと試みています。クレイジーらグループメンバーはもちろん、旧録なのかそれとも遠隔録音なのかフレッシュもフィーチュアされ、この他舎弟軍団を中心になかなかバラエティに富んだ面子が揃いました。それぞれをチェックしてみますと、やたらテンションが高い人や、オッサンくさいしゃがれ声の人、（別に巧いとは言えませんけど雰囲気はある）歌ものの人も含まれていますモー・ザグズ・ソルジャーズ、まだまだファミリーの一員として頑張っているらしいビッグ・カズ、レイジー関連作には結構登場回数があり（本作でも一番出番が多い割にはあまり効果的には見えません）シン・Ｃ、ガヤ要員として契約している人なのか？と存在意義がやや曖昧に見えますＬＫＷなる人（達）、あまり印象に残りませんでしたキーフ・Ｇ、（おそらくしゃがれ声の正体はこのひとと思われます）ビッグ・ＣＡ、そしてボツトラックの割にはさすが結構ビートも立っていて”聴ける”内容になっています２パックなどがフィーチュアされ、グループ本体の好調さを反映する出来になっていました。これらゲストに与えられますトラックもソウル感満点の歌っぽいものやロックテイスト溢れるスケールのある曲、出自のＮＷＡを意識したと思われます緊張感のある曲などマイナーにしては高レベルな楽曲が揃っています。主役もゲストに持っていかれないよう頑張っていますしファンなら是非押さえておきたい好盤とできるでしょう。
Kia Shine/Due season: モータウンから出てきました新人です。と言っても裏方経験は豊富で近年ライターとして認知度が上昇し、自身のアルバムをリリースするに至った模様。１０年以上前ですけど、キンフォークというラップデュオがありまして、このメンバーで髪型といい顔つきといいそっくりな人がいます（ジャケ写なんかも同じポーズだったり）。名前が違えどこれって同一人物では？と思って調べたのですが証拠が見つかりませんでした。プレイ・イン・スキルズがプロデュースしたハイフィー風シングルがヒットしており、アルバムもこの路線かどうか気になるところであります。クレジットを見てみますとＰＩＳは結局この１曲のみ、このほか（西も南もこなします）Ｔ・ミクスが１曲、その他の曲は（ラ・チャットが独立後にトラック制作を頼んでました）ラップ・ハスラーズが全曲を作っています。本人のラップはあまり声も張っておらず、客演で登場する８ボール＆ＭＪＧやジム・ジョーンズの”ボーリーン”が食ってしまう場面もままあったりしましてメジャーでこれだと正直きついのでは？と思ってしまう無主張っぷりです。ただ前述のプロデューサーとの組み合わせは悪くありません。シングルと同じような路線のエレクトロ調ピコピコ音トラック、そしてＴ６Ｍを思わせる猟奇テイストと、流行を上手く消化しニーズに丁寧に答えています。特にＤＪポール＆ジューシィ・Ｊを意識したと思われます曲では本家と同レベルのソウル感を持たせることに成功しています。ユニヴァーサルがこれを知って彼らを起用したのであればかなりの目利きと言えるでしょう。若干シングルとの印象がずれる結果ではあれど質的にはかなり高いデビュー作だと思いますので機会があれば一度手にとって見ると良いかと思います。